なぜ世界の国々は戦闘機を自前で作るのか?| 田母神俊雄

日本は国産戦闘機を諦めてしまったのか。
田母神セブン 2023.01.20
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 田母神セブン通信は、元航空幕僚長の田母神俊雄が、軍事・国際情勢・日本の行方などについて解析するためのチームを新たに結成し、田母神俊雄とそのブレーンによる広く深い、ニュース・分析をお伝えしてまいります。

1.国産ジェット戦闘機F1

2.F2の挫折

3.完成品輸入とは?弊害は?

4.兵器輸入による国益流出


国産ジェット戦闘機の初飛行

 自衛隊は、主要兵器である戦闘機やミサイルシステムなど多くがアメリカ製である。戦後我が国はGHQによって軍需産業は解散を命ぜられ技術者はそれぞれ別の仕事をすることになった。我が国が独立した後、これらの技術者を再集合させることは困難であり、我が国はやむを得ずアメリカから戦闘機などの図面を買って国内で造ることにした。これをライセンス国産という。ライセンス国産はアメリカから出来合いの戦闘機を買ってくることに比べれば価格が2倍になる。日本国内に戦闘機などの製造施設を造る分だけ値段が高くなる。しかし主要兵器国産の能力がなければアメリカの都合で自衛隊の戦力はコントロールされてしまう。それでは自衛隊の自立が出来ず、結果として国家の自立が出来ない。我が国は、国家の自立のために、やがて国産の戦闘機やミサイルシステムを製造することを目指し、金がかかってもライセンス国産方式を採用し軍事技術の蓄積を図ることにしたのである。戦後30年経って1975年初の国産ジェット戦闘機F1が飛んだ。当時まだ我が国はジェットエンジンを製造する能力は不十分であり、エンジンはロールスロイス製を採用したが、その他はほぼ国産で造り上げた。

国産戦闘機の挫折

そして1980年代中頃までには我が国の武器等製造技術は世界に引けを取らないレベルまでに向上していた。板を3枚張り合わせてリフレクターを回転させずに全周に電波を出すフェーズドアレイレーダーを世界に先駆けて開発に成功した。戦闘機などの機体軽量化のため、またレーダー反射面積を縮小するチタン複合材も開発された。丁度その頃我が国はF1後継機となるF2の国産開発に着手しようとしていた。航空自衛隊は3機種の戦闘機を使っていたが、対米関係から2機種はアメリカ開発の戦闘機のライセンス国産、1機種のみ国産開発という方針でいた。しかしこのF2の開発にアメリカが注文を付けてきた。日米共同開発にしてくれという注文だ。アメリカは日本の軍事技術の向上に恐れをなし、日本に戦闘機を造らせないという行動に出たのだ。航空自衛隊は抵抗した。我々は3機種のうち1機種は国産にしたいのだ。何が悪いのかと米空軍と戦っていた。しかし最後は我が国の政治が折れた。レーガン政権の圧力に屈し中曽根内閣は日米共同開発に決定した。こうしてF2戦闘機はその時すでに少し古くなりかけていた米空軍のF16をベースとした共同開発になった。戦後の国産戦闘機挫折の始まりである。

完成機輸入になったF35

そして2008年頃から航空自衛隊は次の戦闘機の機種選定に入った。私が航空幕僚長時代にアメリカは盛んにF35の売り込みをかけてきた。F35は米ロッキードマーチン社が主導した米英伊豪など8か国共同開発の戦闘機で、すでに開発は終了し日本は9番目のプロジェクト参加国となるということだった。しかし日本は遅い参加となり戦闘機開発技術の向上も望めない計画に参加して完成機輸入の形になってしまう。戦闘機国産の方向性からすると日米共同開発のF2よりさらに後退する。しかも3機種とも米国製になりアメリカの自衛隊に対するサービスの低下が予測される。私はこの時F35よりやや性能は落ちるが英独伊西の4か国が共同開発したユーロファイターにしてはどうかと思っていた。ユーロファイターは日本のライセンス国産を認め、米国製ではよくあるブラックボックス(戦闘機技術の非開示)を設けないと提案していた。私の在職中は次期戦闘機は決まらなかったが退官後最新鋭のF35に決まった。F35は確かに最新鋭ではある。しかしこれは予想通りライセンス国産も認められず、アメリカで製造したものをそのまま輸入することになった。

兵器輸出の原則

戦闘機やミサイルシステムは自動車の輸入とは勝手が違う。自動車はアメリカ製のものを買っても別にアメリカの世話にならなくとも町の自動車整備工場で整備しながら運転できる。しかし兵器システムは使っている間ずっと製造国の技術支援が必要なのだ。

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  • 再び国産戦闘機を目指す

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