夏休み特別企画|田母神から学生諸君へ05|対米依存から脱却せよ

夏休み特別企画の最終回です。田母神俊雄から学生諸君へ伝えたいこと第五回
田母神セブン 2023.08.30
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〇日米安保とアメリカ国内情勢
〇守りを固めて更に守るという愚
〇アメリカは助けてくれるのか?
〇なぜ国産の武器が必要なのか?
〇自衛隊と自衛隊以外の軍の違い
〇日本が自ら招いた外患

日米安保とアメリカ国内情勢

皆さんこんにちは。今日は対米依存から脱却せよという話をしたいと思います。戦後日本は日米安全保障条約のもと、いざとなったら、アメリカに守ってもらうということをベースに国の守りを考えてきました。 しかし今、アメリカも非常に国内が混乱をしているという状況です。建国以来最大の分断状況などと言われており、各地で民主党バイデン政権の批判が高まっております。国際情勢では終わりの見えないロシア・ウクライナ戦争や、さらに、台湾有事を喧伝しますが、中国を抑える効果的な策も打つことができておりません。

そういう状態の中で日本がどうなるかわからないのに「アメリカ頼み一辺倒」これを国の守りの基本に据えているというのは、私は極めてまずいのではないかと思います。そのことが中国などにも足元を見られる結果に繋がっているというふうに思います。

自民党政府も昔から「自分の国は自分で守る体制をつくるべきだ」と言ってきましたけれども、私が自衛隊に30数年いても、なかなか自分の国を自分で守るという方向に自衛隊の体制作りがなされなかった訳であります。

「自分の国を自分で守る。」そのためには、まず自衛隊の戦力の形、これを整えなければいけません。自衛隊は元々極東にある米軍基地を守るということで立ち上がりましたので、非常に戦力が守りに偏した形になっています。海上自衛隊、航空自衛隊、それぞれ海上自衛隊は極東において米軍が戦うそのときに潜水艦対応を主体とした作戦の実施をするということで作られた部隊であります。

守りを固めて更に守るという愚

航空自衛隊は極東に存在をする米軍を空から守る。いわゆる防空部隊として立ち上がったわけであります。したがってスタートからして守ることに非常に重点が置かれた軍の構成になっています。それは結果として攻撃力を持っていないということであります。攻撃的兵器は持たないということを日本政府はよく国会でも証言をしてきました。その結果攻撃的兵器を持つことは悪いことであると言う風に国民もだんだん思うようになっていったのではないかと思います。しかし、世界の軍を見れば自衛隊以外の軍は「攻撃と防御のバランス」が十分に考えられた軍の構成になっているわけです。日本もそろそろこの軍の形を、攻防のバランスのとれたものにしなければいけないと思います。

近頃イージスアショア、このイージス艦の陸上版をやめるということが決まって、その代わりに政府は今、イージス艦のように海上に船を浮かべてミサイル防衛をするという形をとる、これを進めようとしています。

しかし、これもまた莫大なお金がかかると思います。そしてどれほど守りの準備をしても完全に守ることはできないわけであります。完全に守るのには、相手に攻撃を思いとどまらせるしかないわけです。ところが日本に攻撃力がなければ、相手は反撃される心配がないから安心して攻撃できるわけです。

もし日本が「やられたらやり返す」という意欲を持てば、日本を殴ったら殴り返されるかもしれないということで相手は攻撃を思いとどまる可能性が高いわけです。これが抑止です。これで戦争を抑止する事が出来るわけです。そういう意味で攻撃力を自ら持たなければなりません。

アメリカは助けてくれるのか?

アメリカが反撃をしてくれるはずだということに頼りすぎてはいけないと思います。日米安全保障条約はアメリカの自動参戦を保証しているものではありません。日本が攻撃を受けたときに、まずアメリカの大統領が日本を守ると決断をして、アメリカ軍に行動を命じなければアメリカ軍は日本を守るために行動できません。

そして、大統領がもし決断をしてくれたとしても、大統領の決断の有効期間は2ヶ月しかありません。2ヶ月経つと、アメリカの議会の同意がなければ、アメリカ軍はまた行動できないことになるわけです。撤退せざるを得ないということです。

それではアメリカの議会がいつでも日本を守ることを議決してくれるのだろうか?という事を気にしながら外交を執り行うことになります。これでは国の方針が極めておぼつかない形となります。ご存知のようにアメリカの議会では、いわゆる反日法案と言われるような法案がどんどん通過しているわけです。

このアメリカ議会に例えば日本と中国がぶつかったときに、いつでも日本を守ることを議決してくれというのは無理かもしれないと私は思っています。かなり高い確率で無理ではないでしょうか。ですから中国はアメリカを出動させないためにまず日本に第一撃を加えて、アメリカが日本を守るという決断をしてアメリカ軍を投入するのを待つかもしれません。

そしてそのまま2ヶ月待つ。そうするとアメリカの議会が議決できなくて、アメリカ軍は撤退せざるを得ない。それから本格的に日本を攻撃するという、日米安保の裏を欠いた行動に出る可能性だって十分考えられます。

ですから、自分の国を自分で守るという形になっていなければ、日本は非常に不安定ということであります。

なぜ国産の武器が必要なのか?

また、自分の国を自分で守るときに、やはり戦闘機とかミサイルシステムとか、あるいはイージスシステムとか、そういったものはやっぱり国産で作れないと国民の生命・財産を守れないと思います。

近代の兵器はハードウェアだけではなくてその能力の半分以上がソフトウェアで決まります。ソフトウェアは中身が見えません。戦闘機の基本プログラム、これは作ったアメリカでないとわかりません。技術の基本ソフトウェアもそうです。したがって、国産にしなければソフトウェアがどこまで有効なのかが分析できませんから、自分の能力をきちんと把握できないということになります。そしてこのソフトウェアを日本が作れないということになるとアメリカからまた高い金で売りつけられるということにもなります。

従って自前で主要な影響は作れるという体制を維持しなければなりません。自前で作れないと、例えば中東のサウジアラビアとかクウェートとか、更にはそれよりも国力が劣る国と同様にアメリカの兵器を買って、アメリカに守ってもらうという格好を続けて行く事になってしまうと思います。

世界の大経済大国日本がそういうことでは私はまずいと思っています。日本という国は非常にお金もありますし、技術もありますし、中国などから見ても魅力的な国だと私は思います。その国が自ら守る意思を示さなければ、これは中国などからいろいろ工作を受けることに繋がっていると思います。アメリカが政治の状況がどう動くかわからない、10年後20年後、国際情勢がどう変わるかわからない中にあって、やっぱり信頼できるのは自分の国だけだと思います。そういう意味で、日本はまず自分の国を自分で守るという方向に一歩踏み出す。それはまず兵器体系を攻防のバランスのとれたものにする。

主要な兵器は国産で作ることができるというふうにすると占領下でアメリカから押し付けられた今の日本国憲法の占領憲法を改正する機運にもつながります。そうすれば自衛隊を日本国軍として正規に認めることも必要になってきます。憲法で軍を認めないということになっていますから、現在の形では自衛隊は命令がなければ、悪意を持った外国の飛行機とか船が日本に対して侵略を企てても、これに対応できないわけです。ですから、尖閣諸島に中国の船が入ってきても、自衛隊はこれを排除できません。

自衛隊と自衛隊以外の軍の違い

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  • 日本が自ら招いた外患

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