国際秩序へのチャレンジとトライ | 浅間さん抄(1)

国際社会・国際秩序を読み解く
田母神セブン 2023.02.09
読者限定

田母神セブンでの執筆を拝命しました、浅間良恒と申します。教育学部(学校心理)卒、金融系システムエンジニアとして約20年務めている会社員です。目に見えるものの裏側・仕組みに関心を向けて、自分が納得するまで調べて考えます。いわゆる愛国者目線とは異なるところもありますが、味変のようなものとしてご賞味ご笑覧ください。

1. 田母神論文問題や疑獄事件は何だったのか

2. 現代の国際秩序とはNew World Orderの事

3. 第三次大戦は忠勇征露丸改め中庸正露眼で

4. 世界平和と世界平定との混同にご注意あれ

5. 世界秩序の潮目に日本らしさを発揮なるか

1.田母神論文問題や疑獄事件は何だったのか

~額面通りの事件でなく、背後に綱引きがあると見る~

「私は本当にいい人なんです」、そう言って田母神さんは場を和ませる。私の場合、「私は本当に疑い深いんです」と言う。情報システムを扱う仕事がら、人間の思い込みや作為を見越して問題に向き合わなければならない。田母神さんを日の当たる場所から遠ざけた2つの事件に、ある種の意図を私は感じ取る。

 田母神さんは、30歳のころ渡部昇一氏の本に感銘を受け、その後の活躍にも生かしておられる。田母神さんをして「我が師として尊敬」と言わしめる、上智大学名誉教授であった故・渡部昇一氏の言から考察を進めてみよう。

* イエズス会は「反共」という意味で、日本のため大変に役立ってきた

* 総じて、カトリックには「反日」という要素はない

* GHQによる靖国神社廃止を、イエズス会神父(上智大学学長)が諫めた

* 東京裁判の法廷に出てきた証人はみなアメリカ系プロテスタントだった

上を見て、イエズス会を良き友だと思うだろうか。

 ここから読み取るべきは、宗教交じりの勢力争いである。国家神道とイエズス会は協調関係にあり、胴元のカトリックとも反共で一致。対立相手にはGHQやアメリカ系プロテスタントが見て取れると渡部氏はおっしゃる。ここで誰々が反日だとか、国名や宗教名を取り上げて拙速に決めつけるのは下策。ある看板の下に複数のグループがあり、グループ間で対立があり、看板を跨いだ協調関係がある事実を認識することが肝要なのだ。

 イエズス会は他の修道会とは異なる出自も手伝ってか、布教先の現地習俗に溶け込む適応主義政策をとる。これがザビエル以降、中国(清)と日本(和)に根を下ろした仕掛けである。この辺りは別に回を設けて詳しくやりたい。500年前に何があったかを学んでおけば、旭日旗を嫌うのに日の丸にはケチを付けない韓国の言い分など、視界が開けてくる。

 話は飛ぶが、明治維新元勲の西郷隆盛が目指した「敬天愛人」もまた、イエズス会由来である。清の康熙帝がいくつかの修道会からイエズス会を採択したとき、そのしるしとして教会堂に飾る額に寄越した四文字がそれ。そもそもイエズス会の立上げメンバーであったフランシスコザビエルは、現在の鹿児島県祇園之洲あたりに上陸したのだ。当時西洋は宗教改革真っ盛り。以来500年間の各国・各勢力・各宗教宗派の協力と対立の関係を読み解いてこそ、現代の諸問題の理解に繋がるのだ、と風呂敷を広げておく。

2.現代の国際秩序とはNew World Orderである

~かつて我が国は東亜新秩序と、その視座を忘れた?~

 2022年2月のウクライナ件から1年後の節目に、ロンドン大学のカレッジLSEでは、
The Russia-Ukraine War: a challenge to international order(国際秩序への挑戦)というイベントを予定している。ここでいう挑戦(チャレンジ)は、我々の知る言葉と意味合いが違う。テニスのプレイヤーが審判に物言いする事をチャンレンジと言うが、逆らえない権威に盾突く(城の衛兵からの誰何に、反証を試みる)のが原義だ。つまり西側は、自分たちが築いてきた国際秩序に対して、ロシアを悪党と呼んでいるわけだ。

 今日、西側偏重の国際秩序や民主主義、平等観を絶対善に据えられている感が否めない。現地の秩序や習俗が、非民主的だとか差別的だと蔑ろにされている。欧米流の国際秩序や民主主義が、人類にとって悪だったらどうするのか。

 新世界秩序(New World Order)とは、ジョージ・ブッシュ元大統領が公に使用して以来、政治の場で広く使われてきた。これ自体は陰謀論でもなんでもない。冷戦を制したアメリカが、グローバリズムを世界普遍のルールとして押し付けてきたのは周知の事実。

 平たい成長のまま過ごした平成30年間。日本弱体化の原因は、構造改革というぶち壊しを、アメリカが押し付け小泉政権が受け入れた為だとの指摘に頷く人は少なくない。しかし同じ人が、欧米流の世界一極支配にチャレンジしているロシアを無法者と呼ぶ。

 かつて日本は、欧米の帝国主義に立ち向かい、東亜には東亜のと新秩序を掲げて戦ったのである。同じ構図で戦っているプレイヤーを、危険な独裁者と呼ぶセンスを私は持ち合わせない。何から日本を守るべきか、正対すべきは冷戦後の国際秩序ではないのか。

3. 第三次大戦は忠勇征露丸改め中庸正露眼で

~中露が唱えるのは一極支配を改めての世界の多極化~

 日露戦争で大日本帝国陸海軍に配布されたのは忠勇征露丸。昭和24年には正露丸と改められた。今日、国内の報道に浴していれば、ロシアのプーチン大統領がけしからんという認識になる。これは、かつてのカダフィやフセインが悪だとやった西側プロパガンダそのままではないか。冷戦終結の後も、軍事的勢力拡大を続けたのは誰だったのか。

 歴史に学ばず中庸の眼を持てない者が、己が正義の側にあると信じるのは大変に危険である。現実として、2022年5月の段階でロシアを支持・支援する国は世界人口比では半数を超える。数の多さが正しさを示すとは限らないが、世界の潮流は明らかにアメリカ一極の世界秩序ではなく、多極化の世界秩序を指向している。

 かつて征露丸を服用して戦った日本は、時代に合わせて正露丸に改称しつつ国民の腹を守った。第三次世界大戦に際しては、多極化の意義を消化吸収できる正露眼が必要だと考える。

4.世界平和と世界平定との混同にご注意あれ

~戦争を捨てる?戦争させない?戦争の動機こそ真因~

 右も左も世界平和を口にするが、その定義は一致するのか。戦争の起きていない状態を平和と呼ぶ点では一致するものの、方法論が違いを生んでいる。戦争放棄で皆が武器を捨てれば平和の出来上がりという平和派。他方、必要にして十分な防衛力が戦争の抑止になるという国防派。どちらかが正しく、どちらかが誤りなのだろうか。

 二択を迫られる場面では、そもそもの問題設定を疑うべきである。目的でなく方法を競うから対立するのであり、その対立は次の問題を呼ぶ。真に問題解決を目指すなら、対立の解消に目を向けねばならない。離間計の看破、分割統治からの脱却である。

 これは別に回を設けたい話題なのだが。2020年の正月に統一教系の世界平和青年学生連合が渡韓し、徴用工や慰安婦の謝罪をやってのけたのをご存じだろうか。安倍政権を熱烈支持し

この記事は無料で続きを読めます

続きは、1030文字あります。
  • 5.世界秩序の潮目に日本らしさを発揮なるか

すでに登録された方はこちら

誰でも
移転のお知らせ
読者限定
夏休み特別企画|田母神から学生諸君へ05|対米依存から脱却せよ
読者限定
【田母神セブン】どうする家康、どうする統御 | 榊原吉典の視点 第7回...
読者限定
夏休み特別企画|田母神から学生諸君へ04|終戦の日を迎えるにあたって
読者限定
夏休み特別企画|田母神から学生諸君へ03|核兵器
読者限定
夏休み特別企画|田母神から学生諸君へ02|国際政治と靖国問題
読者限定
夏休み特別企画|田母神から学生諸君へ01|日本は侵略国家だったのか?
誰でも
ウクライナ戦争の事実から見える「確かなこと」 |第6回 防衛システム...