北朝鮮のミサイル問題のバカ騒ぎ 前編 | 田母神俊雄
田母神セブン通信は、元航空幕僚長の田母神俊雄が、軍事・国際情勢・日本の行方などについて解析するためのチームを新たに結成し、田母神俊雄とそのブレーンによる広く深い、ニュース・分析をお伝えしてまいります。
令和5年あけましておめでとうございます。今年は元旦から北朝鮮による短距離弾道弾の発射が行われ、浜田防衛大臣が深夜「国連の安保理決議に違反しており強く非難する」と北京の大使館ルートを通じて抗議したという。
何故北朝鮮はミサイルを撃つのか
正月早々また北朝鮮がミサイルを発射したという。防衛省によると、1日午前2時50分ごろ、北朝鮮西岸付近から弾道ミサイル1発が東の方向に発射された。最高高度はおよそ100キロ、飛行距離はおよそ350キロで、朝鮮半島東側の日本のEEZ=排他的経済水域の外側の日本海に落下したと推定されている。船舶や航空機への被害の情報は入っていないということだが、浜田防衛大臣が深夜「国連の安保理決議に違反しており強く非難する」と北京の大使館ルートを通じて抗議したという事が伝えられた。
いつもの通りの大騒ぎであるが北朝鮮のミサイル発射は我が国やアメリカなどを挑発するためにやっているのではない。我が国では何故危険なミサイル発射を行うのだろうと思う人も多いかもしれないが、北朝鮮は国家防衛のため核ミサイルを完成しようとしているのだ。核ミサイルを完成させればアメリカなどの軍事攻撃で国が転覆させられることは無くなる。北朝鮮を軍事攻撃した時に、北朝鮮から核兵器で反撃されてはアメリカなども大被害を被ってしまう。それが核の抑止力である。だから北朝鮮のミサイル発射は今後とも続く。通常のミサイル発射訓練であり性能確認試験であるから北朝鮮がこれを止めることは無い。もちろん北朝鮮もミサイル発射が世界のニュースとして取り上げられることは狙っている。目立つ方が宣伝効果があると考えているだろう。しかし我が国も北朝鮮の核武装を止めることは出来ないことを認識し、北朝鮮の核武装を前提に国家安全保障を考えなければならない。
ミサイルを発射するのは北朝鮮だけではない
それにしても北朝鮮のミサイル発射だけが何故大騒ぎになるのか。恐らく 中国もロシアもそして我が友軍アメリカも年間に北朝鮮の発射数を上回る数のミサイル発射は行っているだろう。しかしなぜか北朝鮮のミサイル発射だけがマスコミなどで取り上げられ大騒ぎになる。
北朝鮮についてだけ米軍や自衛隊が公表するからである。他の国はいつ何発撃っているかも分からない。米軍も自衛隊も公表しないからだ。それでは何故北朝鮮のミサイル発射だけが公表されるのか。それはアメリカにとって都合がいいからだ。アメリカは北朝鮮のミサイル騒ぎにより日本や韓国などに対し、北の脅威に備えるためにアメリカとの同盟関係が必要だろう、アメリカのミサイル防衛システムを早く購入すべきだと説得し易くなる。アメリカの軍需産業の利益のため、アメリカ経済活性化のため情報戦が行われていると考えていいだろう。また中国やロシアも北朝鮮が問題児であってくれることが利益になる。北朝鮮とチャンネルを持つ中露は、日本やアメリカに対し北朝鮮を抑えるために中露の協力が必要だろうという姿勢だ。更には日常的に尖閣諸島海域に侵入し我が国を脅かす中国の脅威が、北朝鮮のミサイル騒ぎによって隠蔽されることになる。北朝鮮には我が国を軍事支配する能力は無い。我が国にとっては、北朝鮮は脅威ではなく中国こそが真の脅威なのだ。
北朝鮮が日本に向けてミサイルを撃つことは無い
北朝鮮に核ミサイルを撃ち込まれたら大変だと言う人がいるだろう。しかし北朝鮮は国家転覆の瀬戸際まで追い込まれなければ我が国などに対して核ミサイルを撃ち込むことは無いと思う。