防衛費増額・敵基地攻撃能力保持の議論でのミスリード| 田母神俊雄  

集団ヒステリーを利用する政治
田母神セブン 2022.12.30
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読者の皆さま、こんにちは。田母神俊雄です。

田母神セブン通信は、元航空幕僚長の田母神俊雄が、軍事・国際情勢・日本の行方などについて解析するためのチームを新たに結成し、田母神俊雄とそのブレーンによる広く深い、ニュース・分析をお伝えしてまいります。

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戦うことができる態勢が戦争を防ぐ

 防衛費を増やすと日本は戦争をする国になってしまうと言って立憲民主党などが息をまく。敵基地攻撃能力保持などはまさに戦争の準備であり、これを止めさせなければ戦争になる、政府自民党は戦争をやろうとしていると言う。しかしちょっと待ってくれと言いたくなる。我が国以外の国では今回の敵基地攻撃能力の保有や以前成立した安保法案に類する法案は、すべての国で出来ている。 

 それでは日本以外の国は例外なく戦争をしたいと思っているのか。そんなことはない。戦争なんかしたいと思っている国はほとんど無いし、ましてそれぞれの国の国民も軍人も戦争をしたいなどと誰も思っていない。しかし我が国では軍人は戦争をしたがるので自衛隊に任せないで自衛隊の手足を縛っておくことが戦争を防ぐことだと思っている人が多い。戦後教育で、旧軍が戦争をやりたがってやらなくてもいい日米戦争をやって、国民が苦しめられたという嘘を教えられてきたからだ。アメリカ占領下で東京裁判史観を強制された結果である。 

軍人は最も戦争をしたがらない人種

 軍人は最も戦争をしたがらない人種だ。自分が死ぬかもしれない、同僚や部下も死ぬかもしれない、そんなことをやりたがる人間などいない。歴史を紐解けば戦争をしたがるのは軍人ではなく政治家なのだ。政治家は自分の身を安全圏において戦争をする。日米戦争を主導したのはルーズベルト大統領であり、イラク戦争を主張したのはブッシュ大統領とチェーニ―副大統領だ。 

 我が国では、政治家でも軍事音痴が多く、戦争の準備をすると戦争になると考える人が多い。これは国際社会の政治家の戦争認識とは180度異なるものだ。「戦争をしたくなければ戦争の準備をせよ。」これが国際社会の戦争に対する普通の認識なのだ。 

世界の軍は国際法で動く

 更に世界の軍は国際法で動く。このことさえ分かっていない我が国の政治家は多い。国際法とは何か。明文化された戦時国際法のような条約とこれまでこのようにしていたという慣習法の集合体、それが国際法と呼ばれるものだ。そして軍の行動に関しては禁止規定である。ネガティブリストと呼ばれる。世界の軍はいくつかの禁止事項があり、それ以外は何でも出来る。これに対し自衛隊だけが、世界で唯一、国際法で動くことが出来ない軍なのだ。 

 自衛隊が行動するためには、国内法上根拠となる法律が必要というのが我が国政府の考え方である。自衛隊は根拠規定、ポジティブリストで動く。自衛隊は国内法で決められたことしか出来ない。インド洋に外国艦艇への給油を目的に派遣された海自艦艇は給油以外のことは実施できない。目の前で海賊に襲われている商船を見ても助けることは出来ない。それをやることは違法行為なのだ。外国の艦艇であればすぐに救助行動に出るであろう。商船救助は禁止事項ではないからである。 

 中国が尖閣の海に漁船などを繰り返し侵入させる。これに対し我が国はこれを排除するための手を打たない。我が国以外では、平時から外敵排除の権限は軍に与えられており、中国船が領海に侵入し出て行けという当該国の軍の指示に従わなければ銃撃される。これは国際法的に合法である。 

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  • 戦争をしないためにこそ憲法改正が必要

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